ミルトン・H・エリクソン財団のYoutube公式サイトにエリクソンの映像がリンクされていた。内容は、有名な Nickという男性とMondeという女性に対するデモンストレーションからのハイライトだ。もちろん、公式がこの部分を切り取ったということはこの映像に何か深いメッセージが含まれているのだろう。
映像の長さは2分24秒で、内容の主題はトランス誘導ということになる。もちろん、エリクソンの場合は、トランス誘導と(心理療法の)介入の区別が曖昧だ。それでも、この短い映像の中にエリクソンのトランス誘導の多くの技法が含まれていることが分かる非常に興味深い映像だ。
具体的な技法としては、(メタな)ゴールからの逆算、アーリー・ラーニングセット、(My Freind John 的な第三者を主語にした)間接暗示、意識-無意識のダブルバインド、変性意識に変化していることの示唆、・・・・等。
内容は以下の感じだ。
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見つけ出した後まで、あなたが見つけようとしているものをあなたは本当に知っています。
あなたが知っているこれまでの人生で、あなたは自分の手を上げて、そして下ろすことができることを知っています。
しかし、あなたがずっと前に学んだことがあります。それはあなたが自分の手を持ち上げることができなかったということでした・・・・・あなたはそれがあなたの手であることを知りませんでした。あなたは幼児であり、あなたの手はただの物体でした。
人がトランスに入ったとき、最初に行うことの1つは・・・・その人がある一点を見つめることです。その人は動く必要もありません。話す必要もありません。無意識の心が引き継いですべてを行うこと以外は何もする必要はありません。意識は何もしません・・・普通は興味さえ起こりません。
そして、私があなたと話している間、あなたは呼吸を変えました、あなたの心拍数は変わりました、そしてあなたの血圧が変わったので、あなたは目を開いたままにする必要があることを知っています、しかし、あなたは今目を閉じることもできます・・・その小さくて不規則な変化は、別のレベルの存在として自分自身を知ることを学んでいます。
さて、まずは快適さを楽しんでみてください。あなたの快適な感じが絶えず向上していることを発見してもらいたいと思います。
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エリクソンの言葉は簡単だが、深い。
特に、アーリー・ラーニングセットは、子供の頃何か学習した経験をきっかけにトランス誘導に導く技法だ。よくあるのは、アルファベットが書けるようになった経験だが、ここでは、手の上げ下げを取り上げている。
応用を考えると、日本であれば、ひらがなでもカタカナでも漢字でも、あるいは、自転車に乗れるようになった経験でも逆上がりでも何でもいいだろう。要は、学習して何かができるようになったという経験やそれができるようになった身体感覚を伴ったプロセスに焦点を当てることが重要だということだ。
もちろん、より複雑なことも示唆できるが、本質は何かを学んだ経験、それに身体感覚が伴っていることだろう。
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